生前葬とは今までのお礼の場
存命中に葬儀を済ませる生前葬は、これまでの葬儀とは違った形として注目を集めています。
生前葬の目的
生前葬の目的は主に、お別れというよりも家族や友人に対するお礼が中心となります。従来の葬儀は遺された人が亡くなった人とお別れをする目的が強いですが、生前葬は存命中に儀式を執り行う点が大きく違います。また時間が限られる葬儀と異なり、生前葬はじっくりと時間を掛けてお礼の気持ちを伝えたり、亡くなる前に伝え残したこと、やり残したことを済ませられます。
生前とはいえ葬儀は葬儀ですし、招かれた人は参列せざるを得ませんから、普段忙しくて会えない人とも顔を合わせて話ができます。老後はいつ病気をしたり認知症になるか分かりませんし、記憶や意識が曖昧になると話もできませんから、早めに生前葬を執り行う意味は大きいといえます。
勿論、生前葬をしたからといってすぐお別れになるわけではありませんし、むしろ急に亡くなって遺された人達が後悔するような事態を避けるのが生前葬の目的となります。
生前葬の内容
生前葬の内容、本人の希望を盛り込める自由度の高さから人によって様々ですが、基本的には一般的な葬儀に沿ってプログラムが検討されます。例えば主催者の挨拶や参列者のスピーチ、乾杯の音頭や会食に歓談と、プレゼントの贈呈が行われるケースもあります。
生前葬は、お世話になった人にお礼を伝えたい本人が主役なので、その人の人生を振り返ったり、思い出の曲を楽しむといった内容も盛り込まれることが多いです亡くなった後のお別れではありませんから、雰囲気は明るく楽しいものですし、カラオケやビンゴ大会で盛り上がることも珍しくないです。しかし、死後の葬儀を生前に済ませたいという人もいるので、僧侶を呼んでしめやかに生前葬が執り行われることもあります。
このように生前葬は自由度が高いですから、内容は本人の希望を元に検討したり、プログラムを考えて決めることができます。
生前葬の費用相場
生前葬の費用相場は、結局のところ内容次第ですが、多くの人を招いて盛大に執り行うとなると一般的な葬儀並みの金額になります。数名の規模で立食くらいなら十数万程度で済むでしょうが、数十人も招くとなると大きな会場が必要です。貸し切りなら相応の費用が発生しますし、スタッフの手配や料理にプレゼントの用意など、何かとコストが嵩みます。
その為、立派な会場で妥協なく盛大な生前葬を執り行なえば、100万円以上の費用が掛かってもおかしくないわけです。中規模なら50万円が目安ですが、会場を厳選して料理も少なめにすることで、30万円くらいに抑えられる可能性もあります。
会場1つ取っても、駅の近くか山奥でも費用は違ってきますし、料理も和洋中や出前クラス、本格的なディナーで大きく異なります。
生前葬だからといって費用が安く済むとは限らず、内容次第で大きく左右されますから、予算を決めつつ希望と天秤に掛けながら内容を決めることが大切です。
生前葬のメリット・デメリット
生前葬のメリット
生前葬のメリットはやはり、存命中に本人の口から伝えたい言葉を家族や友人に伝えられることです。大切な人の死後に多くの人達が後悔するのは、もっと話をしておけば良かった、伝えたいことがあったのに伝えられなかったなどです。つまり、生前葬は元気な内にあえて改まった場を設け、後悔や心残りの無いように儀式を執り行えるのがメリットです。
普段恥ずかしくて言えないことも、生前葬なら絶好のチャンスと捉えて伝えることができますし、口に出して言うことでスッキリとします。人によっては感謝だけでなく、謝りたかったことや確認したかったことなどがあるものですから、これらを含めて生前に済ませることができます。一般的な葬儀は突然ということも珍しくなく、慌ただしく内容を決めて執り行うことも少なくないです。
お別れには時間が必要ですが、あまりに慌ただしいと気持ちの整理がつかなかったり、後からポッカリと穴が空いたかのような寂しさを覚えることがあります。
生前葬は気持ちの整理を済ませておけるので、葬儀本番では慌てずにお別れできますし、ひどく寂しい気持ちになることも避けられます。
生前葬のデメリット
生前葬のデメリットは、葬儀とは別に執り行う儀式ですから、費用が増加してしまうのが難点です。
生前葬のみで従来の葬儀はしないという選択肢もありますが、流石に火葬をしないわけにはいかないです。火葬にも形式や必要となる費用が存在しますから、結局生前葬をしたからといってコストを抑えられるとは限らないわけです。
生前葬を小規模にするなどの工夫で、葬儀本番の費用を抑えることは可能ですが、それでも大幅な節約というのは難しいでしょう。加えて、生前葬はまだ一般的ではなく知っている人は知っている状況なので、誰もが賛同してくれるとは限らないことに注意が必要です。
生きているのに葬儀をするイメージから、不謹慎という感想を抱く人もいますから、よく考えて検討したり招く必要がありそうです。
生前葬の準備
生前葬には準備が不可欠ですから、生前葬を決めたら1つ1つ準備を進めて備えることが大事です。
親族への説明
親族への説明は基本中の基本で、本人が生前葬を希望していること、具体的に何をするか決めて伝えることがポイントとなります。何も決まっていないと、親族に説明することはできませんから、まずは予算を決めたり会場や内容を検討するのが良いでしょう。その上で、いつ頃に開催予定で招待したら来て欲しいという希望を伝えるのが賢明です。
生前葬は、急な葬儀ではないとはいえ時間を作らないと参列できませんから、招待する人の事情を考慮して日時を決めたり、足を運びやすいようにしておくことも肝心です。場所や日時、所要時間や大まかな内容が決まっていれば親族にも説明しやすく、納得や賛同をしてもらえる可能性が高まります。それから質問されたことにしっかりと答えられるように、抜かりなく準備を済ませておくことをおすすめします。
感謝の挨拶
感謝の挨拶は、いわば生前葬におけるメインイベントの1つですから、挨拶の内容を決めておくのは生前葬の準備で必要不可欠です。更にいえば生前葬の準備において優先順位が高く、最も重要視して注力する必要がある内容ともいえます。
生前葬では存命の本人が自らの口から感謝の挨拶を伝えるので、本人にとって伝えたいこと、話しやすい内容を念頭にスピーチを想像しながら決めていくのがおすすめです。幸いなことに、生前葬ではスピーチの内容を考える時間がたっぷりとありますから、失敗を恐れずにアイデアを出したり、検討に検討を重ねることができます。
一度内容を決めても、翌日に確認してみるとしっくりこないということもあるので、納得いくまで時間を掛けて考えることが大切です。それができるのは生前葬ならではですし、時間を掛けられるメリットを活かして感謝の挨拶を考えるのが正解です。
内容をしっかり固める
内容をしっかり固めることは、沢山の人を招いて盛大に執り行うことからも重要性が高い準備のポイントです。死後のお別れの葬儀と違って、生前葬は感謝の気持ちを伝えたり心残りの無いお別れを済ませるなど、様々な希望や目的を形にすることができます。それだけに、目的を決めて目的に沿った内容で生前葬を計画することが欠かせないです。
誰が何の為に生前葬を執り行うのか、主催者は誰で誰を招待するのかなど、全てを1つ1つ決めることが求められます。曖昧なままだと計画がグダグダになってしまいますし、本人も招待された人も納得できない、微妙な生前葬になりかねないので注意です。内容を固めておけば家族の賛同や協力が得られますし、友人も前向きに協力してくれる可能性が出てくるでしょう。
葬儀会社のサポートを受けるなら、希望する内容や予算の確定は不可欠なので、このあたりをしっかりと固めることが重要です。後は招待する人のリストアップや会場の選定、開催日時の検討と準備を進めていけば、生前葬の形が見えてくるはずです。
供養方法もしっかり考える
生前葬は感謝を伝えたり気持ちを整理するのに役立ちますが、供養方法についても考えておくことが必要です。
永代供養
永代供養はお墓の購入が不要で、家族や子孫といったお墓を管理する人がいなくても、お寺に遺骨を預けて管理を任せられる方法です。お墓の管理は思いの外負担が大きく、お墓と離れて暮らす人にとっては、移動するだけでもひと仕事です。仕事をしていれば休みが必要になりますし、それが年に複数回となると有給休暇を使わざるを得なくなります。その点、永代供養は日々の管理をお寺がしてくれるので、長きにわたって安心して任せることができます。
お墓を建てるとなると費用がネックになりますが、永代供養であればコストを気にすることなく、現実的な費用の負担なので無理なく検討したり決めることが可能です。永代供養は供養方法の選択肢の1つに過ぎませんが、少子高齢化で継承者不足が深刻化している現代では、かなり注目が集まっているのも確かです。
散骨
散骨は文字通り遺骨を撒く方法で、主に海洋が選ばれることが多いです。自然に遺骨を撒くことに賛否はありますが、自然に還り一体となるイメージが強いので、特定の宗教やしきたりに縛られたくない人に人気です。一箇所に眠る樹木葬と異なり、海洋という広い場所に散骨するわけですから、開放的でポジティブなイメージを抱く人も少なくないです。ただ、散骨にもルールがあってどこでも自由にとはいかないので、事前にルールを確認して検討を進めることが大事です。
散骨のメリットはお墓の用意が不要で、管理の手間もないことから、金銭や心理的な負担を子供に残したくない人にとって魅力となります。日本だと火葬して遺骨を骨壷やお墓に収めるのが一般的ですが、海外では散骨を主な供養方法としている国も珍しくないです。
供養のあり方は多種多様ですし、希望も人それぞれ異なりますから、自然に還って眠る供養に魅力を感じたら散骨を検討してみるのが良いでしょう。
まとめ
生前葬は従来の葬儀の代わりではなく、後悔しない為に感謝の言葉を伝えて心残りを無くす儀式です。自由度は高いので目的は人それぞれですが、死後にあまり家族に負担を掛けたくない人が、生前にお別れを済ませる目的で生前葬を決めるケースもあります。それだけに内容もケースバイケースですし、パーティーのように明るい場合もあれば、擬似的な葬儀といえるしめやかな場合もあります。
当然ながら費用も目的や内容によって左右されますが、100万円以上掛かるケースがある一方で、数十万円程度に抑えられるケースも多いです。
生前葬のメリットは、本人が存命中にやりたいことを決めて計画を立てたり、会場や招待する人を決めて執り行えることです。通常の葬儀とは別なので費用が嵩んだり、認知が不十分なことからネガティブなイメージを抱く人がいるデメリットはありますが、それでも総合的にはメリットが上回ります。とはいえ親族への説明や賛同、協力はとても大事ですから、目的や内容をしっかりと固めて準備を進めることが肝心です。
感謝の挨拶の内容や供養方法も十分に検討することで、満足できて悔いの残らない生前葬が実現します。