どんなトラブルがあるの?
身内が亡くなると悲しい気持ちになるのは当然のことですが、一般的には故人が遺していった遺品は遅かれ早かれ整理されることになります。身内の間だから、揉めることもないだろうと楽観的に考えられがちですが、実は遺品整理の際にはさまざまなトラブルが家族や親族の間で起こっているというのが事実です。では、一体どのようなトラブルが起こっているのでしょうか。
勝手に遺品整理が進められた
まず多いのが、知らない間に勝手に遺品整理が進められたというケースです。
例えば兄弟姉妹のどちらかが結婚や仕事の関係で遠方に住んでいるなどという場合、故人と一緒に暮らしていたり、近所に住んでいる残った方の兄弟や姉妹が何の相談もなく勝手に故人の遺品を捨ててしまったり、もらい受けてしまうなどということがあります。
遺品を整理した本人にしてみれば、悲しみが癒えない中で亡くなった人の物を整理しているのだから、自分の判断で処分したりもらい受けたりしても構わないだろうという気持ちがありますよね。
でも、遠方に暮らしてそう簡単には遺品整理に参加出来ない人にとっては、処分をしてしまう前にせめて故人の思い出の品を見ておきたかった、また、最初から時間を見つけて自分も遺品整理に参加するつもりだったのかもしれません。
それなのに勝手に処分する物を決められてしまったら、良い気持ちがするはずがありませんよね。
口約束によるトラブル
また、形見分けの際に起こる口約束によるトラブルというのも少なくはない例のひとつです。
身内が亡くなったら多くの場合、故人が生前に使っていた物や大切にしていた品物を思い出として家族や親族に分けたりしますよね。そんな形見分けの際に、身内のひとりが故人が生前に例えば「この指輪は私が死んだらあなたにあげるわね。」などと言われたとしましょう。
言われた方は形見に指輪をもらう心積もりでいたのに、その指輪が高価な物であったなどということが判明すると、たとえ家族の間でもそんな高価な物を自分だけもらうなんてフェアではないなどという声が上がりかねないのです。
生前に約束したとはいえ、それは口約束に過ぎず何の証拠も残っていないために誰が指輪をもらうかで、揉めに揉めて家族の関係が悪くなってしまうといったことは、十分に起こり得ることなのです。
その他にも遺品整理に掛かった費用を誰が負担するかということも、トラブルの種になります。
相続が絡む場合は相続者が均等に支払えば済む話ですが、実際には一部の親族だけに負担が掛かり不満を抱えるケースが増えています。
遺品整理で揉めないために
せっかく今まで仲が良かった家族や親族の関係が、遺産整理を切っ掛けに悪くなってしまうのは悲しいことですし、故人だってそんなことは望んでいないはずです。では、そういったトラブルを避けるためにどんな予防方法があるのでしょうか。
遺品整理を一人で行わない
まずは、遺品整理を一人で行わないということが重要です。
特に複数の相続人がいるなどという場合、一人で遺品整理を行うと金品等の配分について他の親族と意見が合わずトラブルに繋がる可能性があるからです。それに、まだ心の整理がついていない時期に遺品整理を一人で行うと、冷静な判断が出来ず「あれは処分しなければよかった。」などと後悔することになるかもしれません。
自己判断は避け必ず相続関係者と一緒に行うようにしましょう。
事前に話し合う
誰もが納得するような遺産整理を実現させるためには、関係者全員が事前に話し合うということが大きなポイントです。
遺品整理の際にトラブルが発生する大きな原因のひとつとして、片付けを始める前に家族や親族と片付けに関した意見を交換していないからということが挙げられます。自分の頭の中だけで段取りをつけても、きちんと話し合わない限り相手には伝わりませんよね。意見交換をすることで揉める確率を格段に下げることが出来るということを、是非覚えておいてください。
意見交換を滞りなく進めるためには、参加者が意見を出し合う前にまずは自分の考えをまとめておくということです。
こういった話し合いでは誰かが進行役を務めますが、誰かが話をしている間は自分の意見と食い違っていても話の腰を折るようなことはしないようにしましょう。その代わりに個々が求める主張についてをしっかりと聞いておくべきです。
冷静に自分の意見を出すことが肝心です。そして参加者全員が、自分の主張だけでなく他人の意見を謙虚に聴くことで擦り合わせが実現し、余計な争いを避けることに繋がるのです。
相続物に関する具体的に取り決めをする
遺品整理の際の関心事であり、トラブルの元でもあるのが相続ということではないでしょうか。
トラブルを出来る限り避けるためにも相続物に関する具体的に取り決めをするということは非常に重要です。
そのためにはまず遺産に関わるすべての人が、相続財産というのは一体どのようなものなのかということを理解していなければなりません。
財産と言える物が全く無いなどという場合はあまり揉めなくて済みそうですが、少しでも財産がある場合は、関係者の理解は必須となります。その中で、だれが遺産を受け継ぐかということを明確にする必要があるでしょう。
もちろん、相続には法律があって遺言状が無い限り法律に基づいて相続は行われることになりますが、後々の家族関係等を鑑みて、相続人同士で財産相続の割合を決定することは可能です。
また、財産としての価値はないものの、アルバムや昔の写真などは家族にとっては財産以上に価値のある物なのではないでしょうか。そうした物を誰がもらい受けるかということも良く話し合って決めましょう。あまりに膨大で嵩張り過ぎるという際には、データにして残すという方法もあります。
写真に収めてデータ化してしまえば、実際の遺品は処分したとしてもいつでも写真は見ることが出来ますよね。
自分自身でできる身内間でのトラブル回避
終活というい言葉が世間ではすっかり市民権を得ていますが、自分自身が亡くなった際に遺された遺族の間でトラブルが起こらないように事前に対策を練っておくことも立派な終活のひとつだと言えそうです。
遺された身内のために出来ることは、実は自分で思っているよりもずっと多いかもしれません。
生前整理をしておく
まずは生前整理をしておくということがあります。生前整理は文字通り、生きている間に自分の死後のことを考えてある程度身辺を片付けておくことです。持ち物が多過ぎて自分でもどこに何があるか把握出来ていないなどという場合、残された身内は尚更途方に暮れてしまうでしょう。
体力のあるうちに、思い切っていらない物を処分してしまうことで、身内が遺品整理をする際にそれほど苦労しないで済むのではないでしょうか。
財産目録の作成
財産目録の作成というのも遺品整理の際には大きな助けとなるはずです。
財産目録は、相続対象となるものには何があってそれぞれどれだけ価値があるかといった一覧表を指します。
これがあるのとないのとでは、遺産分割のスムーズさが格段に違ってくるでしょう。
例えば不動産等は、分割するのが困難な財産の中でも代表的なものですが、財産の中にそういった物が含まれているということが早くからわかれば、被相続人を交えて遺産分割方法のための話し合いを行うことが可能になります。
財産目録の重要性はそれだけではありません。相続税の発生の有無や発生した場合に課税額の見通しも事前に知ることが出来るという大きなメリットがあります。課税額に関する情報をあらかじめ知ることによって効果的な節税対策が取れるかもしれませんよね。
遺品の整理では、さまざまなトラブルが予想されますが中でも1番後を引くのが遺産相続の場面ではないでしょうか。
法律を元にして遺産分割をするとなると明らかに不公平が生じ、そのために兄弟姉妹の関係が悪くなったという話や、遺産相続が原因で絶縁してしまったなどという話は枚挙にいとまがありません。
遺言書をかいておく
自分が亡くなった後の身内のトラブルを回避する1番の方法は、遺言書をかいておくということです。遺言書をかいておけば、遺産の分割方法について相続人が悩む必要がなくなります。すでに分配は決まっているのですから、遺産分割協議なども行わなくて済むでしょう。
また、法的には相続権がないという人でも、生前お世話になったからと自分の遺産を相続させることが叶うのです。
長男の嫁がずっと介護してくれたから、是非自分の死後に遺産の一部をわたしたいと思っても、法的には長男の嫁には相続権がありません。でも、遺言書にしっかりとその名前を書いておくことで、お世話になった人に自分の財産を残すことが出来るのです。
自分が死ぬことなど、今から考えたくないと考えるのは当然のことかもしれません。でも、遺言状があるだけで、実際に遺された家族や親族の間で余計なトラブルが起こらずに済んだという事例はたくさんあるのです。そういった意味では、遺言状というのは、亡くなった人からこれからの未来を生きて行く家族に対する最後のメッセージだと考えても良いのではないでしょうか。
遺言状には証人が必要ですが、子の承認には国家資格である行政書士や司法書士等が対応してくれるうえ、守秘義務があるため内容について知られたくないという場合でも安心して依頼することが出来ます。
また、付言事項には法律に縛られることなく自由な言葉を付け加えることが可能です。どうしてこのような財産分配になったのか、などといったこともここに記せばそれは家族にしっかりと届きます。
残された家族も故人の意思とメッセージを尊重して、争いを起こすことなく解決に繋がるのではないでしょうか。
まとめ
故人の遺品を整理するには、まずは自分の心を整理することから始まります。
遺品整理には決まったやり方も決められた時期もありませんが、大切なことは遺産整理は一人では行わないということです。
親族間のトラブルを避けるためにも、事前に話し合いを行って出来る限りみんなが納得出来る形で進めるようにしましょう。
遺産相続は、遺品整理以上にトラブルの元となることが少なくありません。
遺産整理や相続で揉めることがないように、相続者は事前に話し合いを行い、具体的な取り決めをしておくことをおすすめします。自分が亡くなった後に、残された家族の関係が悪くならないように生前に遺言書を書いておくということはトラブル回避のために大いに役立ちます。身の回りの物を処分し、身辺整理をすることと共に家族の良好な関係を守るために重要な役割を果たします。
終活という言葉が高齢者のものだけでなくなった現在、元気なうちから終活を始めるということはめずらしいことではなくなっています。自分が亡くなった後、家族に何が出来るか、どんなメッセージを残すことが出来るのかということにひとりひとりが真摯に向かい合うことで、家族間に起こるかもしれないトラブルを避けることが可能なのです。