終活準備をする理由
突然の入院・手術
病気が発覚したり事故などで怪我をしたとき、入院・手術をすることになります。その際に意思に伝えておくべき持病や服用している薬についての情報は家族に伝えてもらわなければいけません。ですから、健康なときにそういった情報をまとめておく必要があります。それに治療をして、例えば進行がはやい癌などであれば治療の甲斐なくそのまま人生を終えることもありえます。
それまでは普段どおりの日常を送っていると、「死」に対して何の準備をしないままでその時を迎えることになるでしょう。そうなると、残された家族としては、片付けるべきことが山積して何から手を付ければいいのか困ってしまいます。
もちろん、治ると信じて入院・手術をするのでしょうが、将来のことで確かなことは誰にもわかりません。考えたくはないことでも、最悪の事態を想定して動くべきです。入院・手術をきっかけに終活準備をしておくと、持病や薬等の情報も含めて家族が適切に対処できます。
認知症の発症
2018年の時点で、日本では65歳以上の6人に1人が認知症患者という統計が出ています。この割合は年々悪化しており、将来的には5人に1人、そして4人に1人となると予想されます。つまり、健康そうに見える人でも、いつ認知症を発症しても不思議ではありません。
認知症は、自分や家族のことがわからなくなることに加えて、見たり聞いたりしたことを理解して正しい判断ができなくなってしまいます。そのため、環境が変わったわけではないのにとても生活がしにくくなってしまいます。理解や判断をする力を失った認知症患者が生活できるようにするためには、周囲の人や行政によるサポートが必要です。
そして、もう一つ心配しなければいけないのが、金銭的な問題です。というのも、金融機関の預貯金や不動産などの中には、本人しか存在を知らないものがあります。健康な状態であればいつでも聞き出せるでしょうが、認知症であればその記憶が失われてしまう恐れがあります。
それから認知症を発症したときに想定されることとして、お金が必要だからと不動産等の売却をしようとしても契約ができなくなる事等があります。預貯金だけでは介護資金などを捻出できないときには、大変な事なので注意しましょう。
認知症を発症したときに就活準備を進めておけば、これらの問題を解決でき家族の負担が軽減されます。
死後の手続き・相続
人が亡くなれば、遺族は悲しくても必要な手続きをしなければいけません。死亡届や葬式の手配、参列者への連絡などもすべてやるべきことです。ただ、そういった手続きはいろいろと複雑ですし書類の作成や話し合いなどをしなければいけませんから、相当な負担になります。
そのため、遺族とは言えやりたくはないという人も出てきます。そういったことが想定されるならば、就活準備としてあらかじめ誰に何をしてほしいのかということを遺言書で指示しておくとスムーズに事が運びます。遺族も、誰かに押し付けられたら反発するでしょうが、本人からの指名であれば受けざるを得ません。
また、死後には相続のことで骨肉の争いが起きることがあります。法律通りに遺産を分配して皆が納得できればいいのですが、状況によってはそうもいきません。たとえば、同居している子どもが介護を負担していたり、家業を継いだ子どもがいたりすると、そのことを考慮した遺産分配が求められます。
血のつながった者同士が、財産を巡って醜く争うことなどあってはならないことですから、終活準備として誰にどの遺産を相続させるのかを指示しておく方が良いです。
遺言書に法的な効力を持たせるためにも、弁護士・行政書士・司法書士等の専門家の知恵も借りておくと万全です。
親族・人間関係の伝達
冠婚葬祭は、親族や友人・知人との繋がりも重要な要素になります。知人は月日ともに疎遠になる人もいれば、深い付き合いをしている人もいます。ただ、配偶者は子どもは全ての親族・人間関係を把握しているわけではありません。学生時代に仲が良かった親友がいても、当人同士の連絡だけしかしていないと、家族にとっては赤の他人です。
亡くなる前に教えておかないと家族がそういった人間関係を知る機会がないので、訃報を伝えるべき人として一覧をつくっておきましょう。余裕を持って準備をしていれば、連絡先は知らないけど仲が良かったから知らせて欲しいという人を探すこともできます。
逆に、昔の会社の同僚や連絡先は知っているただの知人で、年賀状やお中元・お歳暮等のやり取りが途切れている人ならば、ならばわざわざ訃報を伝えなくても良いでしょう。そのように人間関係を終わらせることができるのは、本人以外にはいません。
親族については遠戚だと、本人しか関係性を把握していないことがあります。知っている限りの親族を家族に伝えるためにも、家系図や住所録などを作成しておくとわかりやすいです。
親子でする終活準備
エンディングノートを書いてもらう
終活準備といっても、考えるべきことはいろいろとあります。親子で打ち合わせをしていても、いざというときに失念してしまうこともあるかもしれません。ですから、備えておくべきことを全てまとめておくエンディングノートは必要です。エンディングノートは、特別なものでなくとも、文具店やコンビニで購入できる普通のノートで十分です。もし、後で読みやすくすしたいというならば、パソコンのワープロソフトで内容をまとめて紙に印刷してファイルに綴じれば良いでしょう。
まず最初の方は生前に必要な情報を書き出していきます。入院・手術認知症に備えて、かかりつけ医や持病・服用している薬・既往歴などを書き出していきます。それから認知書に備えて所有している財産を一覧にまとめておきましょう。次に亡くなったときのことで葬式やお墓の手配をどうするのか、死後に行う行政手続きや相続はどう処理するべきか、親族や人間関係はどうなっているのかということを項目ごとに書き出していきます。
必ずテーマとなる項目に対して、伝えておくべき情報や解決方法が提示されるよう書いてもらいましょう。相続など子どもが当事者となりそうなことは、トラブルを防ぐためにも親子で十分に話し合いをして内容をまとめた方が最良です。
気持ちよく終活準備をしてもらう
子が親に終活準備をしようとエンディングノートを勧めたら、「財産目当て」とか「親の死を願っているのか」と怒らせることもあります。いつか来る日のために備えておくことは大事ですが、本人の気持ちを無視して強引に準備をさせるべきではありません。では、親に理解をしてもらいつつ、就活準備を始めるためにはどうすればいいのかというと、直接的なアプローチはやめたほうが良いです。
婉曲的に終活について特集している雑誌やテレビ番組にそれとなく見せたり、親戚に頼んでそれとなく話をしてもらうといった方法をとれば静かに受け入れてくれる可能性がります。また、子どもが先にエンディングノートを書き始めれば、一緒に書いてくれることもあるので試してみましょう。
具体的な対策を行う
身じまいの準備
人が生きていくと生活に必要な家具や洋服から趣味のものまで、膨大な物を所有することになります。そういったものは、死後に誰も使う人がいなくなります。子どもが気軽に処分できるものであればいいのですが、思い出の品は処分をするのに罪悪感を感じてしまうでしょう。それに希少価値のある収集品などであれば、世の中には高い値で買ってくれることもあります。
本人ならば気兼ねなく処分できる洋服や家具などは、ゴミとして捨てるか不用品買取業者に引き取ってもらいましょう。そして価値あるものは、専門店やコレクターに売って次の世代に引き継いでもらえば無駄になることはありません。そうして手に入れたお金は、葬儀代などに充てれば子どもの負担が減ります。
物以外にも、クレジットカードや銀行口座などで使っていないものがあれば、解約をしてしまったほうが良いです。もちろん、電話など生活をしていく上で必要な契約もありますから、要不要をしっかりと確認しながら手続きをしましょう。
サポート体制を整える
人の死というのはいつ訪れるかわかりませんから、常に気を配っておくべきです。でも、子どもが日中は仕事で家を離れていたり、離れて暮らしていると、もしものときにすぐ対応できません。そんなときに備えて、親が住んでいる地域の地域包括センターのスタッフや親戚・親の友人などと普段から連絡を取り合っておきましょう。
そうすれば、いざというときに子どもに代わって対応して欲しいと頼むことができます。電話やSNSなどで繋がっていれば、何かあったときに連絡をしてもらえます。
もし、親の周囲に頼れる人がいないというときには、警備会社の見守りサービスを利用するという方法もあります。一人暮らしの高齢者が増えていることもあり、センサーを家に取り付けたりスタッフによる定期的な訪問を行っています。もし、何か異変があればすぐにスタッフが駆けつけますし、契約者である子どもにも連絡が来ます。病気で倒れたというときでも、その見守りサービスが駆けつけてくれれば命が助かる可能性があります。
様々な病気を見据えた財産管理
病気で財産管理ができないということで、たとえば記憶や判断力が失われる認知症を発症した場合が想定されます。そういった病気になってから対応すると、無駄な契約を結んで大金を騙し取られたり、介護費用を捻出するために不動産を売却するといったことができなくなる恐れがあります。
銀行では認知症になった親の貯金を、家族関係と使途を証明する書類を提出すれば引き出せるように業界が動き始めました。しかし、それ以外のことでは、何も準備をしていないと子どもというだけではできないことが多いです。
では具体的に何をすれば良いのかと言うと、成年後見制度の手続きをしておきましょう。成年後見制度は認知症などで判断能力が落ちている人に変わって、代理人が一定の範囲で支援をする精度です。成年後見制度は家庭裁判所に申し立てをして、調査官による事実の調査を受けます。
権限の違いによって代理人は後見人・保佐人・補助人という種類があるので、状況にあわせてどれが相応しいのかを考えなければいけません。事実の調査で、申立の内容が認められたら大抵の場合は申立人が代理人になれます。たまに家庭裁判所が別の人物を選出することもありますが、そのときに選ばれるのは弁護士や司法書士なのであまり心配することはありません。家庭裁判所による審判がでたら審判書謄本をもらい、法務局に登記が行われたら代理人としての権限が使えるようになります。
不動産等の相続対策
債券や不動産のように複数の相続人が公平に分けるのに手間取るであろう財産は、処分をしてお金に換えた方が良いでしょう。自分が生きているときには、家を残しておきたいというときには、死後になって相続人がどのように処分しお金を分配するのかということを遺言に残しておけばトラブルを防げます。借金があるときには不動産や車など処分できるものをあつめて返済をしておけば、子どもに負の財産を引き継がせることはなくなります。
遺言書を作成するときには、自分で内容を書くだけの自筆証書遺言、公証人に依頼して遺言を作成する公正証書遺言、内容を誰にも知られないように公証役場に保管してもらう秘密証書遺言があります。一般的には自筆証書遺言と公正証書遺言が作られることが多いのですが、書かれている内容が確実に実行されて欲しいならば公正証書遺言のほうが良いです。
なぜなら、公証人が作成しているし保管場所は公証役場なので、法的な問題が起きにくくいからです。本人に遺言能力がないときや証人に問題があれば無効になることもありますが、慎重に作成すれば無効になる可能性は低いです。
費用と手間はかかっても、相続で骨肉の争いが起きることを防げるのですから準備をする価値はあります。
まとめ
考えなくはなくても人生の終わりは誰にでも来ますから、終活準備はしなければいけません。終活は、病気や怪我などで病院で治療で受けるときのことも含めて、死後にやるべき各種手続きや葬式の手配、相続の内容などを決めておくことです。
その内容はエンディングノートにまとめておくことで、いざというときに使えます。そこでは親子がしっかり内容について話し合う必要があります。終活を親が気乗りしない時には、いろいろと配慮しながら誘導をしていきます。
最終的には不要なものの処分や、何かあったときに対応できるサポート体制の手配、不動産の処分や遺言書の作成などを抜かりなく準備すれば、万全の体制で終わりの日を迎えられます。